溶解度

【飽和溶液と溶解平衡】

一定温度では,一定量の溶媒に溶かしうる溶質の量には限界があり,この限度まで溶かした溶液を飽和溶液という。飽和溶液では,溶質が溶液中に溶け込む速さと溶液中から析出する速さが等しくなり,見かけ上,溶質の溶解や析出が停止した状態になる。この状態を溶解平衡という

 

【固体の溶解度と再結晶】

溶解度

一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量を,その溶媒に対する溶質の溶解度という。水に対する溶解度は通常,水100gに溶解しうる溶質の量(g)で示す。右図のような溶解度と温度の関係を表したグラフを溶解度曲線という。一般に固体の溶解度は温度が高くなると大きくなる。

(例外)水酸化カルシウムCa(OH)2 水に溶けて発熱するような物質

 
 

再結晶 

KNO390℃では水100gに対して,約200g溶ける。温度を10℃下げると,約170gまでしか溶けなくなる。つまり,90℃のKNO3飽和溶液を,80℃に下げると溶けきれずにKNO3が析出してくる。一方,NaClのように溶解度曲線に大きな差のないものは,温度を下げたところで,ほとんど析出してこない。溶解度の差を利用すれば,KNO3NaClの混合物から,KNO3を取り出すことができる。この溶解度の差を利用する精製法を再結晶という。

 

例題 硝酸カリウムの溶解度は水100に対し0℃で13.380℃で169である。

(1) 硝酸カリウムの80℃における飽和溶液150g中に硝酸カリウムは何g溶けているか。

(2) 硝酸カリウムの80℃における飽和溶液150g0℃に冷却すると,結晶は何g析出するか。

 

(1) 溶液は,水と溶媒の量を考える。80℃では溶解度は,水100gKNO3169gなので飽和溶液は269g。飽和溶液150gでは,次のようにまとめられる。

 

飽和溶液269gKNO3169gが溶解しているので,飽和溶液150gでは,169×150/26994.2394.2g

 
 

(2) 80℃と0℃の溶解度を比較すると次のようになる。80℃の飽和溶液269g0℃に冷却すると,温度変化によって水の量は変化しないので(100gのままなので),析出するKNO316913.3155.7g 

 

80℃の飽和溶液150gでは,155.7×150/26986.8286.2g

 

例題

硫酸銅(U)五水和物CuSO45H2O 20.0 g60の水50.0 gに溶かし,これを20まで冷却したときに析出する硫酸銅(U)五水和物の結晶の量は何gか,有効数字2桁で答えよ。ただし,硫酸銅(U)無水物の水に対する溶解度は2020.0(g)であるとする。H=1.0O=16.0S=32.0Cu=64.0      

  

CuSO45H2Oなどの水和水を含む結晶を水に溶かすと,水和水は溶媒の一部になる。溶液の溶解度は,水和水を含めた水の量で考える。

CuSO45H2O 20.0gCuSO4H2Oの質量は次のようになる。

 
 

 60℃での溶液は,水=50.07.257.2g〕,CuSO412.8g〕。この溶液を20℃まで冷却したときに析出するCuSO45H2Oxgとすると,このxgの中に含まれる水はx×90/250g〕,CuSO4x×160/250g〕。20℃の溶液は,CuSO4の溶解度と比較すると次のようになる。 

 

水,CUSO4,飽和溶液のうち2つを選んで,方程式(比例式)をたて,xを求めると,2.4gとなる。

 

【気体の溶解度】

溶媒に接している気体の圧力が1.013×105Paのもとで,溶媒1Lに溶かすことのできる気体の体積を,標準状態に換算して表す場合が多い。

気体の溶解度は高温ほど小さくなる。これは低温では気体の熱運動はあまり大きくないので,比較的容易に水中に閉じ込めておくことができる。高温では逆に気体分子の熱運動が大きいので,水中にとどまらずに飛び出していくからである。

 

ヘンリーの法則

一定温度で,一定量の液体に溶ける気体の溶解度は気体の圧力に比例する。混合気体では各成分気体の溶解度はそれぞれの分圧に比例する

溶ける気体の質量,物質量は気体の圧力に比例する。この溶けた量を体積で表す場合,注意が必要(気体の体積は,圧力によって変わるから)である。

 
 

☆ 体積はどの圧力下での値か注。分かりにくければ,体積は物質量〔mol〕や質量〔g〕から状態方程式で求めるとよい

☆ 塩化水素HCl,アンモニアNH3など,水に溶けやすい気体はヘンリーの法則には従わない。



例題

標準状態(0℃,1.0×105Pa)で,水1.0LにメタンCH4は標準状態に換算した体積で56mL溶ける。次の問に答えよ。原子量H=1.0C=12,気体定数R=8.3×103PaL/(Kmol)

(1) 0℃,2.0×105Paで,水5.0Lに溶けるメタンは何gか。

(2) 0℃,5.0×105Paで,水1.0Lに溶けるメタンの体積はこの条件下で何mLか。

(3) (2)を標準状態に換算した場合,何mLになるか。

(4) メタンと窒素が1:3の体積比で混合された気体を,1.0Lの水に接触させて,0℃,6.0×105Paに保ったとき,メタンは何g溶けるか。

 

(1) CH4 56mL(=0.056L)は,0.056/22.4×160.040g〕。圧力は2倍,水の量は5倍なので,溶解する質量は,0.040
 ×2×50.40g

(2) 56mL  (3) 56×5280mL〕 

(4) メタンの分圧は,6.0×105×1/41.5×105Pa〕。圧力が1.5倍なので,0.040×1.50.060g